「誰が言ったか」より「何を言ったか」が大切

世の中には風通しが良い組織と悪い組織があります。思ったことを言っても自分の立場的な安全や精神的安全が脅かされない組織とそうではない組織があるのです。

商品の欠陥を見つけた社員がそのことを指摘すると「すぐに改善しよう」、「対策を考えよう」となる組織は健全ですが「そんなの心配しすぎだよ」と鼻で笑われたり、ひどい場合では「お前は何を言っているんだ」と恫喝されたりして、善意で指摘した社員の安全が脅かされる組織は不健全な組織と言えます。

後者のような不健全な組織では、部署と役職が全てになります。

部署と役職を超え、会社のため・お客様のために発言する社員の善意は踏みにじられます。やがて何を言っても無駄で自分が損をすることに気づき、善意の社員はいなくなります。

 

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「それはお前が考えることではない!」

これはA氏が上司のB氏に言われた言葉です。

A氏は善意からあることを申し出ました。しかしB氏に恫喝まがいに「それはお前が考えることではない!」と言われたのです。

「何を言ったか」より「誰が言ったか」が重要と考えるB氏は、A氏の申し出が気にいらなかったのです。「お前ごときが何を言っている」と思ったのでしょう。

それからA氏は、何か気づいたことがあっても黙ったままになりました。その方が自分の安全が確保されるからです。

このような組織はたいがいが減点法です。ミスさえしなければ得点を上げなくて良いのです。

表向きは積極性が必要だとか何だとか言いますが、本音では「余計な事はしなくていい」のです。そして「それはお前が考えることではない」という言葉(=本音)になって現れます。

上司と部下はあくまで指揮命令系統である

本来、上司と部下は指揮命令系統における役割に過ぎません。しかし指示する側と指示される側の役割を演じているうちに、いつの間にか「偉い」「偉くない」という序列が生まれてしまいました。

悲しいことに、ほとんどの組織でそれが当たり前になっているので「今の組織はおかしなことになっている」ということに気づきません。
間違った上下関係が空気のように当たり前になっているので、何の疑問もなく皆が受け入れているのです。

しかしそんな組織からは柔軟な発想や現実に対処する力は生まれません。

突然ですが俳句の世界では「偉い」「偉くない」を取り除く仕組みがあります。俳句は先生と弟子が「句会」と呼ばれる集まりで俳句を披露し合います。

しかし「先生」がいて「弟子」がいると序列が生まれまれるのは人間の常です。その序列は遠慮と忖度(そんたく)を生み「誰が詠んだか(=言ったか)」になります。これでは本当に素晴らしい句が評価されにくくなります。

そんなことを防ぐため、句会では全員の句を匿名化して発表することで序列の弊害を無くしています。この仕組みで句会を行うと、句歴30年の先生が選ばれないこともよく起こるそうです。

俳句は保守的な世界だとばかり思っていましたが、実は本当に良いものを残すための知恵と工夫にあふれた世界なのです。

「発言力が欲しければ偉くなれ!」…本当にそれで良いのか?

私はオープンで風通しが良い組織が健全な組織だと考えています。

恐怖で縛り上げて統制を取っていると、組織は次第に上手く回らないようになります。恐怖で縛られた人たちは表向きだけ「良い子」にしてやり過ごす術を身に付けるからです。

そして上司の目が届かないところやサボれるところではサボるようになります。だから脆弱な組織になるのです。

また「発言力が欲しければ偉くなれ」は一見実力主義のように見えますが、実は違います。どんな手を使ってでも昇進すれば勝ち、「勝てば官軍」の世界です。

そこには正しい方法論や物ごとの道理、仕事の本質はなく「その場さえクリアできればいい」という短絡的な価値観が蔓延します。

当然、長期的な視野で仕事をする社員はいなくなります。また、ノウハウを共有するどころか自分以外誰も信じないという頑なな姿勢の社員ばかりになってしまいます。

ルールが明示されているか?

では健全な組織には何が必要でしょうか?
それは公正なルールが明示されていることが最低条件となります。

公正なルールがあり、そのルールに従っている限り安全が保障される…、こんな風土があってはじめて、社員は活き活きと発言したりチャレンジできるのです。

逆にルールが無い組織では「どうしたらいいか?」を上司や周りの顔色を伺いながら少しずつ「多分こうすれば安全だろう」とやっていく必要があります。

当然スピードは落ちるし、何より社員のやる気と積極性が無くなります。

ルールが無かったり曖昧だったり、その時々で変わったりする組織では指針となるものがないので、周りの顔色を伺わざるを得ないのです。

まずはルールをしっかりと制定し、そのルールを破った時だけ罰則がある、このように社員の立場的な安全と精神的安全を保障し「誰が言ったか」より「何を言ったか」が大切とされる健全な組織を目指すことが、結果として強い組織の近道になるのです!

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